AI実装 / AI Workflow#018

Instagram動画の制作をRunwayからKlingに移行して、初稿制作時間を42%削った話

移行で速くはなった。が、そのまま量産したら人物が破綻した。どこを自動化し、どこに人間を残したか。8週間の運用ログから、再現できる工程だけを書きます。

J
筑波 次郎
Founder & CEO, arange
2026.6.18 読了 7分
#AI#Workflow#Video#Kling#Automation
$ migrate pipeline: runway → kling
batch 84 clips / 3 creators
first_draft_time -42%
! human figure broke on 9/84
human QA reinstated → stable
#018
TL;DR — この記事の要点
  • ツールは「速さ」ではなく「作り直しの少なさ(初稿採用率)」で選ぶ
  • 全移行しない。1人・1週間で並走し、勝った方だけ広げる
  • 速くなったときほど、人間の最終チェックを削らない
  • 結果:初稿到達時間 5.2h → 3.0h(−42%)

結論から書きます。速くはなった。でも「そのまま量産」は失敗でした。どこを機械に任せ、どこを人が握るか——線引きがすべてです。

アレンジでは、自社事業とクライアント向けに、Instagram用のショート動画を毎週量産しています。これまで初稿の生成はRunwayを中心に組んでいました。今回、生成エンジンをKlingに移行し、初稿制作時間を42%削減しました。ただし、そこに至るまでに一度こけています。その過程を、再現できる形で残します。

なぜ移行したか

きっかけは速度ではなく、**「初稿の打率」でした。Runwayでも品質は出せます。ただ、Instagramのショートで使う「人物が動くカット」で、採用できる初稿が出る確率が頭打ちになっていました。採用率が低いと、結局そのぶん作り直す。トータルの制作時間は、生成速度より「一発で使えるか」**に支配されます。

  • Runway:生成は安定。ただし人物モーションの初稿採用率が伸び悩み
  • Kling:人物の動きの自然さで初稿採用率が上がる仮説
  • 判断軸は「生成が速いか」ではなく「作り直しが減るか」

やったこと

いきなり全移行はしません。完成度60%で出すのがアレンジの基本です。まず1人のクリエイターの1週間ぶんだけをKlingに切り替え、同じ企画をRunwayと並走させて比較しました。

EXPERIMENT SETUP — week 1
# 同一企画 / 同一尺 / 同一構成で並走
runway_clips : 28
kling_clips  : 28
metric : 初稿採用率 / 初稿到達時間 / 修正回数
勝った方だけ翌週に拡張

比較で見るのは見た目の好みではなく、初稿採用率・初稿到達時間・修正回数の3つだけ。主観を入れないために、採用判断は別メンバーが行いました。

速いツールが勝つのではない。作り直しが少ないツールが勝つ。

結果(数字)

1週間の並走で差が出たため、翌週から3クリエイターに拡張。8週間の運用で、初稿制作時間は安定して下がりました。

BEFORE — Runway
5.2h
1本あたり初稿到達時間(平均)
-42%
AFTER — Kling
3.0h
同上 / 8週間運用後

初稿採用率も上がり、修正回数が減ったぶん、後工程の編集者の負荷も下がりました。速くなったのは生成ではなく、作り直しが減ったからです。

失敗:量産で破綻した

ここからが本題です。速くなったので、調子に乗って量産しました。すると84本中9本で、人物の手や顔が破綻。しかも、そのうち2本は人間チェックをすり抜けて初稿提出まで進みました。原因ははっきりしています。速度が出たことで、人間の確認工程を「省ける」と勘違いした

FAILURE LOG — week 4
! human figure broke : 9 / 84 clips
! passed QA by mistake : 2 clips
# cause : 速度を理由に人間チェックを圧縮
fix : 最終QAは必ず人が責任を持つ運用に戻す

これは失敗ログ #007として別途まとめています。AI化を進めるほど、最後に責任を持つ人間の判断が重要になる——という、毎回学び直す教訓でした。

SAME PROBLEM?AI動画の量産フローを、自社の現場に組み込みたい方へ。
30分の壁打ち →

自動化と人間の線引き

失敗から、工程ごとに「機械に任せる/人が握る」を引き直しました。これが今のアレンジの標準です。

工程担当理由
企画・構成設計何を見せ何を削るかは判断
初稿生成(素材)AI速度と量はAIが圧倒的
人物カットの一次選別AI破綻候補をスコアで弾く
最終QA・採用判断責任を持つ工程は人が握る
クライアント提出最後の一行は人が確認

ポイントは、**「AIに任せる」ではなく「AIに働かせる」**こと。人を抜くのではなく、人の判断を残す前提でフローを組む。これが量産しても崩れない条件でした。

学びと次の課題

  • ツールは「速さ」ではなく「作り直しの少なさ」で選ぶ
  • 全移行しない。1人・1週間で並走して、勝った方だけ広げる
  • 速くなったときほど、人間チェックを削らない
  • 次の課題:人物破綻の一次選別スコアの精度を上げる

現場ログでは、こうした検証を毎日続けています。うまくいった話も、こけた話も、そのまま残します。

J
代表取締役 / Founder & CEO — arange Inc.
筑波 次郎Tsukuba Jiro / Jay

Kaizen Platform 動画事業責任者として上場まで牽引。PKSHA Technology 事業責任者などを歴任。現在はAI動画のパイオニアとして生成AI×動画の最前線で活動し、アレンジを率いる。机上ではなく、現場で動かした記録だけを書く。

FAQ

よくある質問

RunwayよりKlingが優れているということですか?
一般論ではありません。今回のユースケース(Instagram向けの人物が動くショート)で、初稿採用率が上がり作り直しが減った、という話です。用途が違えば結論は変わります。
人物の破綻はどう防いでいますか?
一次選別をAIスコアで弾き、最終QAは必ず人が責任を持つ運用に戻しました。速くなっても人間のチェック工程は削りません。
同じことを自社でやるには何から始めればいいですか?
まず1人・1週間で既存フローと並走比較し、初稿採用率・初稿到達時間・修正回数の3指標で判断するのがおすすめです。詳細は壁打ちで整理します。
CONTACT — まずは壁打ちから

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