- ツールは「速さ」ではなく「作り直しの少なさ(初稿採用率)」で選ぶ
- 全移行しない。1人・1週間で並走し、勝った方だけ広げる
- 速くなったときほど、人間の最終チェックを削らない
- 結果:初稿到達時間 5.2h → 3.0h(−42%)
結論から書きます。速くはなった。でも「そのまま量産」は失敗でした。どこを機械に任せ、どこを人が握るか——線引きがすべてです。
アレンジでは、自社事業とクライアント向けに、Instagram用のショート動画を毎週量産しています。これまで初稿の生成はRunwayを中心に組んでいました。今回、生成エンジンをKlingに移行し、初稿制作時間を42%削減しました。ただし、そこに至るまでに一度こけています。その過程を、再現できる形で残します。
なぜ移行したか
きっかけは速度ではなく、**「初稿の打率」でした。Runwayでも品質は出せます。ただ、Instagramのショートで使う「人物が動くカット」で、採用できる初稿が出る確率が頭打ちになっていました。採用率が低いと、結局そのぶん作り直す。トータルの制作時間は、生成速度より「一発で使えるか」**に支配されます。
- Runway:生成は安定。ただし人物モーションの初稿採用率が伸び悩み
- Kling:人物の動きの自然さで初稿採用率が上がる仮説
- 判断軸は「生成が速いか」ではなく「作り直しが減るか」
やったこと
いきなり全移行はしません。完成度60%で出すのがアレンジの基本です。まず1人のクリエイターの1週間ぶんだけをKlingに切り替え、同じ企画をRunwayと並走させて比較しました。
比較で見るのは見た目の好みではなく、初稿採用率・初稿到達時間・修正回数の3つだけ。主観を入れないために、採用判断は別メンバーが行いました。
速いツールが勝つのではない。作り直しが少ないツールが勝つ。
結果(数字)
1週間の並走で差が出たため、翌週から3クリエイターに拡張。8週間の運用で、初稿制作時間は安定して下がりました。
初稿採用率も上がり、修正回数が減ったぶん、後工程の編集者の負荷も下がりました。速くなったのは生成ではなく、作り直しが減ったからです。
失敗:量産で破綻した
ここからが本題です。速くなったので、調子に乗って量産しました。すると84本中9本で、人物の手や顔が破綻。しかも、そのうち2本は人間チェックをすり抜けて初稿提出まで進みました。原因ははっきりしています。速度が出たことで、人間の確認工程を「省ける」と勘違いした。
これは失敗ログ #007として別途まとめています。AI化を進めるほど、最後に責任を持つ人間の判断が重要になる——という、毎回学び直す教訓でした。
自動化と人間の線引き
失敗から、工程ごとに「機械に任せる/人が握る」を引き直しました。これが今のアレンジの標準です。
| 工程 | 担当 | 理由 |
|---|---|---|
| 企画・構成設計 | 人 | 何を見せ何を削るかは判断 |
| 初稿生成(素材) | AI | 速度と量はAIが圧倒的 |
| 人物カットの一次選別 | AI | 破綻候補をスコアで弾く |
| 最終QA・採用判断 | 人 | 責任を持つ工程は人が握る |
| クライアント提出 | 人 | 最後の一行は人が確認 |
ポイントは、**「AIに任せる」ではなく「AIに働かせる」**こと。人を抜くのではなく、人の判断を残す前提でフローを組む。これが量産しても崩れない条件でした。
学びと次の課題
- ツールは「速さ」ではなく「作り直しの少なさ」で選ぶ
- 全移行しない。1人・1週間で並走して、勝った方だけ広げる
- 速くなったときほど、人間チェックを削らない
- 次の課題:人物破綻の一次選別スコアの精度を上げる
現場ログでは、こうした検証を毎日続けています。うまくいった話も、こけた話も、そのまま残します。